めまい、またはめまいに伴う頭痛に対する治療は、ほとんどが耳の病気か、脳の血流障害と診断されるのが、長く一般的でした。
研究を重ねる過程でこの悩みが脳の興奮状態と関わりがあることがわかってきました。
目次
めまいと頭痛は脳の興奮が原因
脳が興奮しやすい人の脳波は、正常なリズムを失い、強弱のはっきりしない波形を示します。
さらに、めまいのある患者さんに脳波検査を行い、目に光の刺激を与えると、多くの場合、大脳の後頭葉(視覚を司る器官)という部位に異常な興奮が現れることが分かったのです。
同様に耳鳴りのある患者さんは、大脳の側頭葉という聴覚を司る部位が興奮しやすいという結果が出ました。これは明らかに聴覚の中枢が正常な働きのリズムを失っていることを表してい ます。
そして、大脳が興奮しやすい人は、 片頭痛や不眠症、さらにはめまいや耳鳴りをもっているケースが多いとも分かりました。
脳過敏症候群によるめまい、頭痛
脳が興奮しやすいことで起こる不快症状には、めまい、耳鳴りのほかに頭痛があります。
片頭痛もまた、「原因不明」と言われて、仕方なく鎮痛剤を飲むだけでごまかしている人がとても多い病気でした。
また日本では伝統的に「頭痛くらい我慢しろ」などと根性論を押しつけられ、病気として扱われない理不尽さもまかり通ってきました。欧米では考えられないことです。
頭痛に関連しためまいの多くが脳の興奮によって発生することが研究により突き止められました。
そして、このようなめまいや耳鳴り(頭鳴) を「脳過敏症候群」と名づけられたのです。
また、慢性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、 群発頭痛と整理することができます。
片頭痛と同様に、原因不明のめまいや耳鳴りも脳過敏症候群によるものと考えると、いろいろなつじつまが合ってきます。
脳過敏症候群による頭痛の種類と症状
頭痛の種類 | 症状 |
片頭痛 |
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緊張型頭痛 |
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群発頭痛 |
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脳が原因のめまいや頭痛のメカニズム
脳神経に原因があるめまいや頭痛がなぜ起こるか、そのメカニズムを説明しましょう。
人間の体は、過度のストレスを受けると血液中にある血小板(血液を固める働きをする成分)からセロトニンという神経伝達物質が血液中に一気に放出されます。
セロトニンは、脳の血管を安定させる作用があるのです。ところが、セロトニンが大量に流れ 出すと、脳血管は一気に縮んで血流が悪くなります。
その後、セロトニンは体内で代謝されるため、今度は血液中のセロトニンが枯渴する状況に転じま す。すると、縮んでいた脳血管が異常 に広がってしまうのです。
ス卜レスで脳は興奮する
つまり、急激な血管収縮の反動による血管拡張が脳過敏の第一歩です。
脳の太い血管は網目状の神経で周囲を包まれています。この神経は三叉神経と呼ばれています。
急に広がった血管で圧力を受けた三叉神経は刺激され、炎症を起こすとされる痛み物質を放出、脳血管はさらに腫れた状態になります。
この情報が脳幹部にある三叉神経を束ねる三叉神経核を経て、大脳に伝わります。この状態を、「脳が興奮している」と呼びます。
そして、大脳の後頭葉(視覚を司る部位)、側頭葉(聴覚を司る部位)、大脳皮質(痛みを認識する部位)を刺激することで、めまいや耳鳴り、頭痛が起こるのです。
つまり、脳の血管が収縮と拡張を繰り返し、神経を刺激することで発生した興奮が、不快疲状を引き起こしていると考えられるのです。また、三叉神経核から大脳への途中に嘔吐中枢があ ります。ここが刺激されると、吐き気が誘発されます。吐き気を伴うめまいはこうして起こります。
簡単にまとめると、ストレスが脳を興奮させ、めまいと頭痛を引き起こしていると言えるのです。
脳過敏症候群によるめまい・頭痛の治療
以前は血流をよくするために処方されていた循環改善剤やビタミン剤が、 脳過敏症候群にはむしろ逆効果だと分かってきています。
血流が良くなり血管が広がると、余計に症状が悪化してしまうからです。
また、運動や入浴、血行が良くなる食物、飲料なども同じように逆効果です。症状を抑えるために薦めていたことが、不快症状を増していたということです。
脳の興奮を抑えるには、やはりストレスを避けるのが一番です。
ただ、どうしても耐えられない頭痛がある場合は、病院を受診することが最優先です。
脳過敏症候群は新しく発見された病気ではありますが、めまいや頭痛を誘発する脳の興奮を抑えるために効く薬があります。我慢できない頭痛、めまいがあれば、専門医を訪ねることが第一です。