めまいの原因となる病気について説明していきましょう。
めまいの原因には様々な病気があります。ここでは、病気の症状にめまいが含まれる13の病気を紹介しています。
目次
良性発作性頭位めまい症
めまいの原因に多いのが「良性発作性頭位めまい症」です。
ベッドで寝ようとして枕に頭がついたときや、寝返り、上を見上げたときなど、体の動きに誘発されて起こるのがこのめまいです。頭の位置(頭位)を動かすことでめまいが発生するのです。
耳を原因とするめまい患者の中でいちばん多いのがこの病気です。発症の状況は人それぞれですが、目薬をさそうと顔を上に向けたとき、靴ひもを結ぼうとして下を向いたとき、洗濯ものを干そうと上を向いたときなどに起きます。
通常は数秒から数分でめまいが治まります。吐き気や嘔吐を伴い、半日寝込むこともありますが、耳鳴りが起きたり、難聴になることはありません。
原因は内耳にある耳石器の傾きや速度を感知するにある耳石(炭酸カルシゥムでできた小さな結晶)がはがれ落ちて、三半規管に入り込んでしまうためです。
はがれ落ちた耳石の粒が三半規管の中に入ることで、固まりとなりリンハ液の異常な流れを起こします。それが脳に異常な信号として伝わり、 めまいを感じます。耳石がはがれるのは、加齢、寝る姿勢、頭部打撲、骨粗しょう症、耳の病気などが関係しているといわれています。
病名に「良性」とついているように、命を落とすような病気ではありません。ただし,めまいは繰り返し起こりますし,いつどこで起こるか分からないため、悩んでいる患者さんが多いのも事実です。
メニエール病が原因のめまい
めまいの病名というと、誰もが頭に浮かぶのは、メニエール病でしょう。
ですが、実際にメニエール病と診断される人は、皆さんが想像するほど多くはありません。
おもな症状は、回転性のめまいが繰り返し起こり、数分から数時間続きます。 ぐるぐるとした激しいめまいで、耳鳴りや難聴を伴うことが特徴です。吐き気や嘔吐があったり、冷や汗が出たり、顔面蒼白になります。
めまいと難聴の発作を繰り返し、発作を重ねることで難聴と耳鳴りが悪化します。突発性難聴と症状が似ているため、最初の発作のときは字断力難しい場合があります。
週に数回、月に数回など、頻繁に発作が起こる場合もありますし、 一度治まっても、数年後に再発することもあります。
メニエール病の本当の原因は不明ですが、過度なス卜レスが原因で生じるス卜レスホルモンの関与が疑われています。
内耳に内リンパ液が過剰に増え、水ぶくれ状態(内リンパ水腫)になることで発症するのです。
内耳の血管条という場所に浮腫が起こると、聴覚が大きな影響を受けて、聴覚障害が発生。その後めまいが起きるというわけです。
治療は薬物療法、およびストレスの軽減・除去、水分摂取療法、有酸素運動(特にウォーキング)などがおすすめです。
また、睡眠不足や過労なども引き金になると考えられています。季節の変わり目に発症したり天候、気圧の変化にも影響を受けます。温かい気団と冷たい気団の境目にできる寒冷前線が通過するときに悪化するのも、メニエール病の特徴です。
ストレスが心にくればうつ、耳にくればメニエール病といわれています。中にはめまいしか症状が認められない前庭型メニエール病という(耳鳴り、難聴のない夕イプの)、メニエールの亜型もあります。ただし、この夕イプは後述の片頭痛性のめまいとの鑑別が必要です。
前庭神経炎が原因のめまい
前庭神経炎の症状はぐるぐると目が回り、周りの景色が流れて見えるとても激しいものです。 この激しい回転性のめまいは3日間から1週間ぐらい続きます。
もちろん立ったり、歩いたりすることはできませんし、横になっていても激しいめまいがあります。目を開けることさえできない人もいるほどです。
まるで震度8くらいの大地震のようなめまいと言う方もいます。めまいの病気の中でも症状状が激しく、吐き気や嘔吐を伴うので、脳の病気や命にかかわる重篤な病気と考えてしまう人も多く、救急車を呼ぶ患者さんがかなりいます。それほど激しい症状なのですが、メニエール病とは違って、耳鳴りや難聴は起こりません。
前庭神経炎は内耳から脳に情報を伝える前庭神経に障害が起きることで発症します。
風邪をひいたあとに発症することもあるので、ウィルスが関係しているのではないかともいわれています。 血流障害や過度のストレス、疲労が引き金になる場合もあります。
普通は入院して治療となります。中心となるのは薬物療法で、ステロイド剤 (抗炎症作用のある副賢皮質ホルモン)の点滴をはじめ、抗めまい薬、血菅拡 張薬、血流改善薬などで、前庭神経の機能とめまいの改善を図ります。
激しいめまい症状が治まっても、ふらつきが確実に残りますので、症状が落ち着いたら、平衡機能を鍛えるリハビリを行うことが必要です。
めまいの急性期が過ぎたら、安静にしているのではなく、体を動かし、リハビリをすることが回復を早めます。
突発性難聴が原因のめまい
突発性難聴は何の前触れもなくある日突然、片側の耳が聞こえなくなる病気です。その突発性難聴とめまいが同時に起きることがあります。
徐々にではなく、「朝起きたら聞こえない」「外出しようと家を出たとたんに聞こえにくくなった」など、まさに突然聴力が落ちるのがこの突発性難聴です。
その症状は難聴や耳のつまりに加え、ぐるぐるとした回転性のめまいや吐き気があり、メニエール病と初期症状が酷似していることから、判断が難しい場合もあります。メニエ—ル病と違って、発作1回だけといわれていますが、めまいやふらつきの後遺症が残る場合があります。
突発性難聴の治療は時間が勝負です。なるべく早く、発病から2週間以内に耳鼻咽喉科で治療を受けましょう。
そうすれば回復の可能性がありますが、1 か月近く放っておくと回復の見込みがなくなります。厚生労働省の報告によると、3分の1の人は回復し、3分の2の人に難聴が残り、難病指定も受けている病気です。
原因はまだ解明されていませんが、ウィルスの感染やストレス、内耳に血液を送る動脈の血液循環障害、動脈硬化で起きるとされています。
発症したら安静にして治療するのが望ましいため、できる限り入院しましよ う。治療はステロィド剤の点滴や抹梢血管拡張薬、血流改善薬などの薬物療法が基本です。
突発性難聴の患者さんは片方の耳に聴力低下や耳鳴りが現れ、同じ側の平衡機能が落ちますので、難聴の治療が終わり、ふらつきが残るときはぜひリハビリをしましょう。
片頭痛性のめまい
片頭痛は名前の通り,頭の片側だけが激しく痛くなる病気で、女性に多く、かつ遺伝します。
ですから、おばあちゃんが片頭痛なら、その娘のお母さん、 そして孫にも遺伝します。
激しい痛みのため吐くこともありますし、寝込むこともあります。この頭痛は脳の嵐といわれ、頭痛の嵐が去るまで、布団の中でひたすら待つのみです。
10人に1人は頭痛が起きる30分前に、ギザギザした光が目の前に広がり、その内部が暗く見えるという「閃輝暗点」という前兆があります。
片頭痛の原因は遺伝のほか、ストレスや脳内の神経伝達物質であるセロトニンの関与、女性ホルモンのエストロゲンの変動などが影響して起こります。
仕事が多忙な時期ではなく、仕事が一段落した週末に発症しやすく、女性の場合は、生理中およびその前後に起こる人が多いのです。閉経後には症状が軽くなります。
めまいは片頭痛と前後して起こることが多いのですが、因果関係はまだ完全には分かっていません。片頭痛とめまいがあったら、頭痛の専門医の診察を受け、自分に合った薬を処方してもらいましょう。
ただし、薬でめまいが改善するのは、片頭痛患者の60%程度です。頭痛が薬で治ってもめまいが残ることがありますので、リハビリ等で症状を改善しましょう。
起立性調節障害(立ちくらみ)によるめまい
起立性調節障害は立ちくらみのことです。朝、布団から起き上がったときにクラッとしたり、長く立っているときに気分が悪くなった経験は、女性の皆さんなら一度や二度はあるのではないでしょうか。
脳への血流が一時的に減って起こる脳貧血が原因です。普通は少し休めは回復するので心配はありませんが、目の前が真っ白になったり、頻繁に立ちくらみが起こるようなら、念のため医師の診断を受けましょう。
朝食をとる食生活や十分な睡眠を心がけ、ウォーキングを中心とした運動で下肢の筋力アップを目指しましょう。
ラムゼイ・ハン卜症候群が原因のめまい
激しいめまいや耳鳴り、難聴だけでなく、顔面神経麻痺が現れるのが、ラムゼイ・ハン卜症候群の特徴です。
この病気にかかると、耳痛の症状に加えて、 耳にかさぶたを伴う水疱や発疹ができます。子供のころにかかった水ぼうそうのウィルスが顔面神経に潜んでいて、免疫力や体力が低下すると、再びウイルスが活気を取り戻すことが原因で発症します。
早期治療が重要です。初期症状が出たらすぐに耳鼻咽喉科に行きましょう。 治寮は薬物療法が基本です。痛みが長く続き、顔面神経麻痺、難聴やふらつきが後遺症として残ることもあります。
慢性中耳炎が原因のめまい
中耳炎は鼓膜の内側に炎症が起こる病気です。何度も中耳炎を繰り返すと、 ウミを出そうとして鼓膜に穴が開き、治療をせずにそのまま放置しておくと、 穴が閉じなくなり慢性中耳炎となります。
穴が開いたままなので、後に難聴や耳鳴りなどの障害が起こります。
そしてさらに病状が進むと内耳に炎症が波及し、めまいが起こりやすくなります。内耳の平衡機能の左右差があり、めまいが起こります。
鼓膜の穴(鼓膜穿孔)を治す根本的な治療が必要です。
持続性平衡障害、加齢性平衡障害が原因のめまい
医師の診断を受けても、「年のせい」「気のせい」と言われてしまうことが多いのが持続性平衡障害と加齢性平衡障害です。
いくつか病院を回ってもはっきりした原因が分からず、 家で寝たきりになってしまう方もいます。まさに高齢化社会が生んだ病気です。
めまいというより、その症状はふらつきで、原因は加齢による全身機能の低下です。安静にしていれば治ると考えていると、悪化する可能性があります。
寝ていることによって、目や耳、足の裏という、平衡機能を使う機会が減って平衡感覚が衰えてしまい、ふらつきがひどくなるという悪循環に陥ります。
この障害が原因となるめまいは運動で改善することができます。
椎骨・脳底動脈循環不全症が原因のめまい
小脳に血液を送っているのが、首の後ろを走っている2本の椎骨動脈と、それにつながっている1本の脳底動脈です。
この動脈に血流障害が起こるのが椎骨・脳底動脈循環不全症です。
その原因は、動脈硬化や頸椎(背骨の首の部分) の変形などです。脳は血液がこないので悲鳴をあげ、その悲鳴がめまいなのです。
回転性めまいやふらつき、頭痛、嘔吐、手足のしびれ、物が二重に見えたり、 霞がかかったように見えるなどの視覚障害が現れる場合もあります。こういった症状のときは、脳神経外科や神経内科を受診しましょう。
高齢の男性に多いので、首に負担のかからないリハビリがおすすめです。
脳梗塞・脳出血の治療後に残るめまい
脳梗塞は、動脈硬化により脳の血管が狭くなり、そこに血栓が詰まって起こる病気です。
発症時にめまいや吐き気、嘔吐のほか、ろれつが回らなくなることもあります。脳出血は脳の血管が破れる病気で、発症時には激しいめまいや嘔吐があります。いずれも早急に脳神経外科などでの救急治療が必要です。
小脳は平衡機能の中枢ですから、小脳で梗塞や出血が起こると、当然平衡感覚にも大きな障害が現れます。
また、治療後もめまいが残ります。壊死を免れて生き残った小脳の一部を鍛えるリハビリは、後遺症によるめまい、ふらつきの改善も期待できます。
心因性のめまい・めまいに伴ううつ状態
精神的なダメージが原因で起こる心因性めまいはまれです。
ただストレスで内耳の血流障害などが起き、めまいやふらつきを訴える患者さんはいます。
心因性めまいで多いのは、めまいが治らないことによって、不安や過度のス卜レスをため込んでうつっぽくなり、自宅に引きこもる方です。
その結果、体を動かさなくなり、さらに平衡機能が衰え、めまいやふらつきが悪化すること ま、十分に考えられます。
心因性めまいは、心療内科や精神科での治療を受けることが大切です。
小脳変性疾患が原因のめまい
小脳変性疾患は神経内科の病気で、特にバランスの主役である小脳が、ゆっくりと壊れていく原因不明の疾患です。
以下の症状に2つ以上あてはまる方はすみやかに医師に申し出て、脳のMRIを撮影しておくべきです。
- めまいリハビリをしていてもふらつきが確実に悪化していく
- 字がだんだん下手になる
- 話し方がスローになり、滑舌が悪くなって、しゃべりにくい
- 手先がうまく使えない。物を落とすことが多い
- 排尿、排便をはじめ排泄障害(自律神経症状)がある
- 立ちくらみ(自律神経の障害)も多い
- 歩くときに重心が取りにくいので、左右の足の間隔が極端に広い
- 杖を使っても歩きにくく、歩行器を使ってやっと歩ける
めまいの原因を突き止める
以上がめまいを引き起こす可能性がある病気です。当てはまる症状はあったでしょうか?
めまいの原因の中には危険な病気が潜んでいることもあります。
めまいが起きたら、まずは自分のめまいがどの病気が原因で起こっているのかをしっかり突き止めることが重要です。